【第63回 気象予報士試験 実技2】問2を徹底解説|台風の衰弱・渦度極大・鉛直軸の傾き
こんにちは!今回は第63回 気象予報士試験 実技2 問2を解説します!
今回の問2では、
- 台風を囲む1004hPa等圧線の南北幅
- 500hPa渦度極大値の変化
- 台風の鉛直軸の傾き
- 700hPa上昇流中心と地上台風中心の位置関係
- 台風の発達・衰弱に寄与する要因
を読み取ります。
特に重要なのは、 台風が熱帯低気圧らしい鉛直に立った構造から、温帯低気圧化に向かって非対称な構造へ変化していく という流れです。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問2(1) 台風と周辺の総観場の変化
問題文
初期時刻から24時間後にかけての台風とその周辺の総観場について、1004hPa等圧線の南北幅、500hPa渦度極大値、台風の鉛直軸、700hPa上昇流中心の位置関係を読み取る問題です。
模範解答
① 台風中心を囲む1004hPa等圧線の南北幅
初期時刻:600km
12時間後:500km
24時間後:200km
② 500hPaの渦度極大値:小さくなる。
台風の気圧中心の鉛直軸の傾き:ほぼ鉛直から北東方向に変わる。
③ 500hPa渦度極大値の移動速度:25ノット
④ 上昇流の中心は、地上の台風中心から北東方向に離れていく。
◇ 解説
① 1004hPa等圧線の南北幅
まず、台風中心を囲む1004hPa等圧線の南北の幅を読み取ります。
初期時刻では、1004hPa等圧線の南北幅は約600kmです。
12時間後には約500km、24時間後には約200kmとなります。
つまり、台風を囲む等圧線の広がりは、時間とともにかなり小さくなっています。
この図で確認するポイント
- 1004hPa等圧線が台風中心を囲んでいる範囲
- 南北方向の幅
- 初期時刻 → 12時間後 → 24時間後で幅が小さくなること
つまずきポイント
ここで問われているのは、台風の中心気圧ではなく、1004hPa等圧線の南北幅です。
台風の勢力そのものだけでなく、気圧場の広がりがどう変化しているかを見る問題です。
② 500hPa渦度極大値と鉛直軸の傾き
次に、500hPaの渦度極大値の変化を確認します。
12時間後には、台風の上空付近に非常に大きな正渦度極大があります。
一方、24時間後には、その渦度極大値は小さくなっています。
したがって、500hPaの渦度極大値は小さくなると答えます。
さらに重要なのが、地上台風中心と500hPa渦度極大の位置関係です。
12時間後には、500hPa渦度極大は地上台風中心のほぼ直上にあります。
しかし24時間後には、渦度極大が地上台風中心の北東側へずれています。
つまり、台風の鉛直軸は、
ほぼ鉛直 → 北東方向に傾く
と変化しています。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:12時間後から24時間後にかけて、台風中心付近で
なぜ:台風が対称な暖気核構造から崩れ、温帯低気圧化に向かうため
何が起きている:500hPa渦度極大値は小さくなり、鉛直軸はほぼ鉛直から北東方向へ傾く
ここが超重要!
発達した台風は、地上中心と上空の渦度極大がほぼ重なり、鉛直に立った構造を持ちます。
温帯低気圧化が進むと、上空と地上の中心がずれ、構造が非対称になります。
③ 500hPa渦度極大値の移動速度
12時間後から24時間後までの間に、500hPa渦度極大は北東方向へ移動しています。
図上で移動距離を読むと、約300海里程度です。
これを12時間で割ると、
300 ÷ 12 = 25ノット
となります。
したがって、移動速度は25ノットです。
計算でつまずきやすいポイント
ノットは「海里/時」です。
距離を海里で読んだ場合は、時間で割るだけでノットになります。
④ 700hPa上昇流中心と地上台風中心の位置関係
700hPa鉛直流を見ると、12時間後には強い上昇流の中心が地上台風中心の近くにあります。
しかし24時間後には、その上昇流中心が地上台風中心から北東方向へ離れています。
そのため、答案では、
上昇流の中心は、地上の台風中心から北東方向に離れていく。
とまとめます。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:12時間後から24時間後にかけて、700hPa上昇流中心で
なぜ:台風の構造が非対称となり、上昇流域が中心からずれるため
何が起きている:上昇流中心が地上台風中心から北東方向へ離れていく
■ 問2(1)まとめ
- 1004hPa等圧線の南北幅は600km → 500km → 200kmと縮小
- 500hPa渦度極大値は小さくなる
- 台風の鉛直軸はほぼ鉛直から北東方向に傾く
- 500hPa渦度極大の移動速度は25ノット
- 700hPa上昇流中心は地上台風中心から北東方向へ離れていく
■ 問2(2) 台風の発達・衰弱に寄与する要因
問題文
初期時刻から24時間後にかけて、この台風の発達・衰弱に対応する気象状況の変化のうち、寄与の大きいものを選択肢から3つ選ぶ問題です。
模範解答
a、e、f
◇ 解説
この問題では、台風の衰弱に大きく関係する要素を選びます。
選択肢の内容は以下の通りです。
- a:台風の気圧中心の鉛直軸の傾きの変化
- b:500hPaのトラフの台風の北西からの接近
- c:進行方向後面の下層の明らかな寒気の流入
- d:進行方向前面の下層の明らかな暖気の流入
- e:台風中心の上陸
- f:傾圧性の大きい領域への台風中心の到達
a:鉛直軸の傾きの変化
問2(1)で確認した通り、台風の鉛直軸は、ほぼ鉛直から北東方向に傾いていきます。
これは、台風が熱帯低気圧らしい対称構造を失い、温帯低気圧化へ向かっているサインです。
したがって、aは重要です。
e:台風中心の上陸
台風は海面からの熱と水蒸気の供給によって勢力を維持します。
上陸すると、海からの水蒸気供給が弱まり、地表面摩擦も大きくなります。
そのため、台風は衰弱しやすくなります。
したがって、eも重要です。
f:傾圧性の大きい領域への到達
傾圧性が大きい領域とは、水平方向の温度差が大きい領域です。
台風がこのような領域に入ると、暖気核を持つ対称的な台風構造が崩れ、温帯低気圧的な構造へ変化しやすくなります。
したがって、fも重要です。
なぜ b・c・d ではないの?
- b:500hPaトラフの明瞭な接近が主因とは読み取りにくい
- c:進行方向後面の明らかな寒気流入はまだ顕著ではない
- d:進行方向前面の明らかな暖気流入も主因とはいえない
つまずきポイント
「温帯低気圧化=寒気流入」と単純に考えすぎると、cを選びたくなります。
しかし、この時点では明らかな寒気流入よりも、上陸・鉛直軸の傾き・傾圧帯への進入の方が重要です。
■ 問2 全体まとめ
- 1004hPa等圧線の南北幅は時間とともに縮小する
- 500hPa渦度極大値は小さくなる
- 台風の鉛直軸はほぼ鉛直から北東方向に傾く
- 700hPa上昇流中心は地上台風中心から北東方向へ離れる
- 台風は対称構造を失い、温帯低気圧化へ向かう
- 衰弱要因は a・e・f
- 上陸、鉛直軸の傾き、傾圧性の大きい領域への到達が重要
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 気象予報士試験 実技2 問2の解説でした!
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